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執筆者の写真nextform じゅんや

最愛の人(2/5)

更新日:2020年3月12日


最後の晩餐

「お婆ちゃん。絢也やで。痛いか?」 この事態にどう語りかけて良いか分からず、僕はこう質問した。

 

30年ぐらい前、 小学生の僕は、祖母に尋ねた事がある。 晩御飯が あと一回しか食べれないとすると何がいい? 祖母は、その時若かったし、 縁起悪い話をしたかったわけもなく、 他愛のない、友達等とするような 最後の晩餐の話。 僕なりにも知らない食べ物が出てくるか。 どんな高級なお店を言ってくれるか。 好奇心を持っていた。 僕にとっては、意外な答えが返ってきた。 「お婆ちゃんが作った、ちらし寿司が食べたい」 僕は、それほど自分が作った ちらし寿司が好きなんだとビックリした。 それから十数年、祖母はズバリ認知症だ。 一緒に住む、僕の母からよく愚痴の電話がある。 何か忘れたり、繰り返したり、色々だが、 母も疲労していた。 僕は、電話で母の聞き手に回る事が多くなってきた。 しかし、母の気持ちも考えず、 ガっと言ってしまった。 ここまで大きくして貰ったのを忘れてないか? 食わせて貰って、服も与えられて、学校も行かせてくれる。 それだけで親は偉い。 ガタガタ言うな! なんか、母に言うのもあべこべな感じ。 母の気持ちがもしかしたら傷ついたかもしれない。 リアルに対峙する母は、本当に疲労していた。 祖母が、なぜちらし寿司が食べたいと言ったか。 それからなんとなく分かってきている。

当店で、何かあると食べたがるのも理解していただけるだろうか。 我が家では、でかい飯台(おひつ)で、酢飯の上に 色んな具が盛られる。 それを取り皿に各々が取り、食っていく。 僕らが、鍋を好むのと同じ気持ちなんだ。 パーティメニューなのだ。 人が集まり、ワッカになり 自分がこしらえた物を食べさせたい。 小学生の僕からの質問には 答えられていないかもしれないけど 最後の晩飯もそうしたかったみたいだ。 なぜなら 祖母の大好物は、 天ぷら。 勿論、大昔から知っている。

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